シッコ

シッコ [DVD]

Sicko。マイケル・ムーアの作品を見るのはこれが初めてだったが、巷間伝わるところから得ていた先入観とはかなり違う。この程度の「突撃」なら、特に誰も気にすることはないだろう。何より驚いたのは、展開がかなりスマートなことだ。スタイリッシュといっていいかもしれない。ふんふん言いながら見ていると、ほんとうにアメリカが極悪な国家に見えてきそうだ。一方、彼の論法に否定的であっても、嫌気が差して見るのをやめてしまおうという気にはあまりさせない。ちょくちょく露出する監督の姿が一番醜悪なこともガス抜きになっていよう。アメリカ人が不健康なのは、アメリカ人自身に問題があることを暗喩として映画から抜け落ちないようになっている。他国の称賛がありきたりで、突っ込みどころを残しているのもそうだ。スタイリッシュというより、古典的な見易さなのかもしれない。キューバに至っては、冒頭でアメリカより医療が劣っているというリストが映し出されていたし。
内容に関しては、保険の原理自体の問題は考える必要がありそうだ。それと、医療資源の正価。これを明らかにしない限り、何も考えようがない。国の提供するサービスのグランドデザインにしてもそう。トータルで考えないで、フランスでは患者も医者も豊かな生活が送れているといっても、患者と医者だけだったらどうしようもないわけだし。
英語が聞き取りやすいのもよかった。喋り言葉はドラマの喋りよりも断然聞きやすい。マイケル・ムーア監督、主演。YJ4.16、(B+,B-)、imDb8.2。